データで見る香川の高卒採用
はじめに
高卒採用は「求人票を出せば応募が来る」という前提が、県内でもう何年も成り立っていません。まずは香川の数字で現在地を確認し、そのうえで今年の打ち手を組み立てましょう。
本稿で使う数字は、香川労働局の公表資料と百十四経済研究所の調査を、報道で確認できる範囲で整理したものです。
出典と集計時点を各所に明記しています。
香川の高卒採用を示す3つの数字
① 高卒求人倍率は3.94倍、8年連続で3倍超
2026年3月卒の香川県内の高校生について、2026年3月末現在の就職内定率は99.0%(前年同月比0.3ポイント上昇)、求職者1,168人に対して求人4,598人で、求人倍率は3.94倍でした。求人倍率が3倍を超えるのは8年連続です。
(出典:香川労働局。KSB瀬戸内海放送報道)
年度の途中経過でも傾向は同じです。2025年10月末現在では、求人4,542人・求職1,209人で3.76倍でした。
(出典:香川労働局発表。KSB瀬戸内海放送 配信)
求人倍率は「求人数 ÷ 求職者数」で、求人票1件あたりの応募確率を表すものではありません。それでも、県全体で求人が求職者を大きく上回っている以上、求人を出しても応募が1件も来ない企業が出やすい環境であることは読み取れます。応募ゼロは、特別な失敗ではなく起こりうる結果です。
② 一般の求人市場は1.39倍 — 高卒は別の相場で動いている
同じ香川県でも、一般職業紹介状況の有効求人倍率は2026年6月時点で1.39倍です。
前月から0.03ポイント上昇し、5か月ぶりの上昇となりましたが、香川労働局は雇用情勢について「求人が求職を上回って推移しているが、持ち直しの動きに弱さがみられる」との判断を前月から据え置いています。
(出典:香川労働局公表。KSB瀬戸内海放送報道)
この有効求人倍率は、新規学卒者を除き、パートタイムを含む求人・求職から算出される指標です。つまり高卒新卒の相場とは別のものを見ています。
ここが高卒採用の難しさの正体です。
一般の求人市場の感覚で「1.4倍程度の競争」と捉えていると、高卒の3.94倍という相場とのギャップに気づけません。この2つの数字を並べると、高卒採用が一般の求人市場とは異なる需給環境にあることを社内で説明しやすくなります。
③ 調査に答えた県内企業の8割超が「人材が不足している」
百十四経済研究所が2026年3月から4月にかけて県内に本社・工場を持つ企業を対象に行った調査では、人材について「大きく不足」14%、「やや不足」69%で、合わせて8割を超えました。「足りている」は17%です。
過去1年の採用結果は、「当初計画の予定通りできた」21%、「一部できた」55%、「採用できず」20%。同調査の回答企業では、計画どおり採れた企業は約5社に1社にとどまります。
なお、この調査は高卒採用に限定したものではなく、回答企業の業種・規模の偏りも公表されていないため、県内企業全体の数値として読むことはできません。傾向をつかむ材料としてご覧ください。
また、2027年3月卒(今年度)の県内の求人・求職状況は、本稿の執筆時点では未発表です。今年度の数字が出た段階で、あらためて現在地を確認してください。
(出所:百十四経済研究所:人材不足8割超 採れる企業、採れない企業の差)
データから考える、今年の3つの打ち手
打ち手1:「募集したか」ではなく「見つけてもらえたか」で振り返る
求人倍率3.94倍という環境では、求人票を出すことは出発点であって成果ではありません。振り返りの指標を「求人票を出した」から「見学の申し込みが何件あったか」「学校から何回問い合わせがあったか」に変えると、翌年の改善点が具体的になります。
私たちが県内企業の採用ご担当者とお話ししていて多いのは、「求人票は出したが、職場見学の申し込みが来ない」というご相談です。
求人票の内容以前に、高校生と先生に自社の存在が届いていないケースが少なくありません。
打ち手2:条件よりも先に「働き方の柔軟さ」を言葉にする
前述の百十四経済研究所の調査では、採用ができた・一部できたと答えた企業に理由を聞いたところ、最も多かったのは「勤務時間、休暇取得、働き方が柔軟」で45%でした。次いで「未経験者や高齢者も採用の対象にした」38%、「福利厚生が充実している」28%、「求人広告の媒体や手法が良かった」26%と続きます(複数回答)。
この調査は高卒に限定したものではありませんが、賃金以外の要素が採用の理由として挙がっている点は、高卒採用の情報発信でも参考になります。休暇の取りやすさや勤務時間の実態は、求人票の欄では伝わりきりません。見学の案内文や自社サイトで、具体的な運用として書けているか確認してみてください。
打ち手3:1年単位ではなく、複数年で認知を積む前提に切り替える
8年連続で3倍超という状況は、単年の求人票だけで勝負する設計そのものが環境に合っていないことを示しています。今年応募がゼロでも、来年ゼロとは限りません。高校生と先生に自社の名前が届いている状態を数年かけて作る、という時間軸で計画を立てるほうが現実的です。
2027年3月卒を対象とする2026年度の香川県の申し合わせでは、選考開始は9月16日、9月30日までは1人1社のみの応募・推薦、10月1日から複数応募・推薦が可能とされています(2026年4月23日の高等学校就職問題検討会議の合意にもとづく報道)。なお県外の企業へ応募する場合は、応募先の都道府県の申し合わせが適用されます。一次で決まらなかった場合に10月以降どう動くかまで、あらかじめ想定しておきましょう。
チェックリスト:秋までに確認したい6項目
・高卒求人倍率(3.94倍)と一般の有効求人倍率(1.39倍)の違いを、社内の意思決定者と共有できているか
・今年の振り返り指標を「求人票を出したか」ではなく「見学申込・学校からの問い合わせ件数」で持っているか
・勤務時間・休暇取得の実態を、求人票以外の場所(見学案内・自社サイト)で具体的に書けているか
・職場見学の申し込みが何件あったかを記録しているか
・9月16日から30日までの1人1社制の期間と、10月1日以降の動きを分けて計画しているか
・採用計画を単年ではなく、来年・再来年まで含めた期間で立てているか
よくある質問
Q. 香川県の高卒求人倍率はどれくらいですか?
2026年3月卒については、2026年3月末現在で求人4,598人・求職1,168人の3.94倍でした(香川労働局)。3倍を超えるのは8年連続です。
Q. 高卒求人倍率と有効求人倍率は何が違うのですか?
高卒求人倍率は、高校新卒者向けの求人数を高校新卒の求職者数で割ったものです。有効求人倍率は、ハローワークの一般職業紹介状況から算出される指標で、新規学卒者を除き、パートタイムを含む求人・求職が対象です。
Q. 香川県内の企業は、どのくらい人手が足りていないのですか?
百十四経済研究所が2026年3月から4月に県内企業を対象に行った調査では、「大きく不足」14%、「やや不足」69%で、合わせて8割を超えました。過去1年の採用が計画どおりできた回答企業は21%です。この調査は高卒採用に限定したものではありません。
Q. 香川県の高卒採用で、1人1社制はいつまでですか?
2027年3月卒については、選考開始が9月16日で、9月30日までは1人1社のみの応募・推薦とされています。10月1日からは複数応募・推薦が可能です(2026年4月23日の高等学校就職問題検討会議の合意にもとづく報道)。県外の企業へ応募する場合は、応募先の都道府県の申し合わせが適用されます。
Q. 県内企業の採用がうまくいった要因には、どのような傾向がありますか?
百十四経済研究所の調査で採用できた・一部できたと回答した186社が挙げた理由は、「勤務時間、休暇取得、働き方が柔軟」45%が最多でした(複数回答)。この調査は高卒に限ったものではないため、高卒採用にあてはめる際は自社の状況とあわせてご検討ください。