高校生の面接で聞いていいこと・NGなこと
目次
はじめに
高卒採用の面接で、悪気なく「本籍地はどちらですか」「ご家族のお仕事は何を?」と尋ねてしまっていませんか。
こうした質問は、本人の適性・能力とは関係のない事項を尋ねるものとして、厚生労働省が「就職差別につながるおそれがある」と位置づけている項目に含まれます。
結論から言うと、面接前にNGとなる質問の型を面接官全員で共有し、聞きたい情報は「適性・能力に関係する質問」に言い換えて確認する。
これだけで、無自覚に不適切な質問をしてしまうリスクを減らすことにつながります。
なぜ悪気がなくても問題になるのか
厚生労働省は「公正な採用選考の基本」の中で、応募者本人の適性・能力に関係のない事項を応募書類や面接で把握することは、それが直接採否の材料にならなかったとしても、結果的に就職差別につながるおそれがあると説明しています。
採否に使うつもりがなくても、面接でたずねることによって本人の適性・能力に関係のない事項を把握してしまうこと自体が問題とされることがあります。
とくに高卒採用の面接は、社会人経験の少ない高校生・高校卒業予定者が相手です。緊張をほぐそうとした雑談のつもりが、進路指導の先生や生徒本人から「不適切な質問をされた」と受け止められるケースもあります。
学校からの信頼を積み重ねる意味でも、面接官全員が「聞いてよいこと」の共通認識を持っておく必要があります。
就職差別につながるおそれがある事項(厚生労働省の分類)
厚生労働省の公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」では、就職差別につながるおそれがある事項を大きく3つに分類しています。
(a) 本人に責任のない事項の把握
・本籍・出生地に関すること
・住宅状況に関すること
・家族に関すること(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
(b) 本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握
・宗教に関すること
・人生観・生活信条などに関すること
・思想に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
・支持政党に関すること
・尊敬する人物に関すること
・労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
(c) 採用選考の方法に関すること
・身元調査などの実施
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
・本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
具体策1: 実例で見る「聞いてしまいがちなNG質問」と言い換え
面接の場でよくある雑談から、無自覚にNGへ踏み込んでしまう実例と、適性・能力に沿った言い換えの方向性を整理しました。
①聞いてしまいがちな質問
「ご実家はどちらですか」「本籍はどこですか」
該当する分類
(a) 本籍・出生地、生活環境・家庭環境等
言い換えの方向性
採用後に無理なく通勤できるかを確認する範囲で「通勤に支障はありませんか」「想定している通勤時間を教えてください」など、必要最小限にとどめる
②聞いてしまいがちな質問
「お父様・お母様のお仕事は?」
該当する分類
(a) 家族の職業
言い換えの方向性
家族構成や家族の仕事は、本人の適性・能力とは無関係のため、聞く必要がない質問として扱う
③聞いてしまいがちな質問
「休みの日は何新聞を読みますか」「尊敬する人は誰ですか」
該当する分類
(b) 購読新聞・尊敬する人物
言い換えの方向性
人柄や考え方を知りたい場合は「学校生活で力を入れたことを教えてください」など、本人の経験・行動に基づく質問に置き換える
④聞いてしまいがちな質問
「ご家庭の雰囲気はどんな感じですか」
該当する分類
(a) 生活環境・家庭環境
言い換えの方向性
協調性や継続力を確認したい場合は「学校生活、部活動、委員会活動、課題研究、ボランティアなどで力を入れたことを教えてください」と本人の経験に絞る
いずれも、面接官に雑談の意図しかなくても、聞き方次第で本人の適性・能力に基づく質問に言い換えられます。ポイントは、家族・出自・信条を経由せず、本人の行動・経験・意欲に焦点を当てることです。
具体策2: 面接官への事前共有を仕組み化する
言い換えを個々の面接官の判断に委ねると、当日の雑談でNG質問が出てしまうリスクは残ります。仕組みとして次を意識しましょう。
・面接前に、NG質問の一覧を面接官全員に配布し、当日までに目を通してもらう
・質問項目をあらかじめ「聞くことリスト」として用意し、その場の思いつきの雑談に頼らない
・事前に役割分担と質問項目を確認し、面接後に質問内容を振り返る場を設ける。面接中に不適切な方向へ話が進みそうな場合は、進行役が質問を切り替える
具体策3: 応募書類も点検する
NG質問は面接の場だけでなく、応募書類や作文のお題にも紛れ込みやすいポイントです。高卒予定者の応募書類は、文部科学省・厚生労働省・全国高等学校長協会の協議により定められている全国高等学校統一応募用紙のみとすることが基本とされています。独自の応募書類や追加項目を使っていないかを確認し、あわせて作文のお題・面接での質問内容・健康診断書等の提出依頼についても、本人に責任のない事項や思想・信条にかかわる内容を求めていないか点検しましょう。
面接前チェックリスト
・面接官全員にNG質問の分類表を共有した
・「聞くことリスト」を事前に用意し、当日の雑談に頼らない体制にした
・事前に役割分担・質問項目を確認し、面接後に質問内容を振り返る場を設けた
・高卒予定者については全国高等学校統一応募用紙のみとし、独自の応募書類・追加項目を使っていないか確認した
・独自の作文お題を使う場合、本人に責任のない事項を書かせる内容になっていないか確認した
・面接官に「差別の意図がなくても、聞いた事実自体が問題になりうる」ことを共有した
・通勤可能性など、業務上必要な情報は「本人の適性・能力に関する質問」に言い換えて確認する運用にした
よくある質問
Q. 高卒採用の面接で本籍や出身地を聞くのはなぜNGなのですか?
A. 本籍・出生地は本人の適性・能力とは関係のない事項であり、厚生労働省の公正な採用選考の考え方では、把握すること自体が就職差別につながるおそれがあるとされています。通勤可能性を確認したい場合は、通勤方法や所要時間を直接尋ねる形に言い換えるとよいでしょう。
Q. 家族の職業を聞いてはいけないのはなぜですか?
A. 家族の職業・健康・収入・資産などは本人の適性・能力とは無関係な事項であり、厚生労働省の分類で「本人に責任のない事項」として就職差別につながるおそれがあるとされています。採否に使うつもりがなくても、把握すること自体が問題視される点に注意が必要です。
Q. 悪気なく雑談で聞いてしまった場合も問題になりますか?
A. 厚生労働省の考え方では、差別する意図の有無にかかわらず、就職差別につながるおそれがある事項を把握すること自体が問題とされています。雑談のつもりでも、面接官全員がNG質問の型を事前に共有しておくことが重要です。
Q. どの質問なら聞いてもよいのですか?
A. 職務遂行上必要な適性・能力を確認するための質問が基本的な考え方です。学校生活・部活動・委員会活動・ボランティアなど本人自身の経験、志望動機といった内容に置き換えるのが一つの目安ですが、質問の範囲や聞き方が過度にならないよう、事前に質問項目を整理しておくことが大切です。