採用ブランディングとは?メリットや行う手順などを解説【高卒、大卒、中途採用】
現在、採用の現場は「売り手市場」と言われています。求職者に選ばれる企業になるには、求職者の欲しい情報をより魅力的に発信する必要があります。求職者にとって、条件面の他に社風などの“企業ブランド“は意外と気になる情報です。
まずは、自社の魅力や特徴を改めて明確にし、戦略的に発信をすることで、自社にマッチした優秀な人材の確保ができるようになるとともに、企業のブランド価値を“資産”として蓄えていくことができます。
1.「採用ブランディング」とは?
採用ブランディングとは、企業の価値を明確にし、自社にマッチした求職者に向け戦略的な発信をすることで、採用力を向上させる取り組みのことです。
この取り組みの核心は、「就業先」としての企業自体に焦点を当て、理想の候補者に対して「この会社でなら働きたい」「ここでの勤務は特別な利点がある」と感じさせることです。企業の文化、価値観、目指す方向性、労働環境の良さ、加入することの利益などの要素を積極的にアピールし、企業ブランドを魅力的に構築していきます。一般的なブランディング戦略で見られるような、テレビCMや著名人を使ったイメージ作りは、採用ブランディングではあまり実践されません。代わりに、企業の理念や価値を伝える効果的なスローガンやメッセージングが、この分野ではさらに重要視される傾向にあります。
2.採用ブランディングを行う4つのメリット
- 応募数が増加
採用ブランディングを通して自社の事業内容や職場環境、優遇制度など広くアピールすると、競合他社との差別化が図れ、求職者の注目を集めることができます。応募数の母数が増加すると、優秀な人材が集まる可能性も高まり、採用市場において他社より優位に採用活動を展開できます。他社との差別化を図ることで、優秀な人材の確保および企業の成長や競争力の向上が期待されます。
- 採用後のミスマッチを最小限に
退職理由で上位に挙がってくるのが、「企業とのミスマッチ」。採用コストを考えると、採用後のミスマッチは企業にとって死活問題です。採用ブランディングは応募数の増加が見込めるだけではなく、ターゲットを絞った戦略をとることで、自社にマッチした人材が集まります。結果、選考途中での離脱や内定辞退、また入社後の離職率を低減させることができ、他社との人材獲得競争に巻き込まれにくくなります。
- 長期的な採用コスト低減
採用ブランディングでは、採用サイトや動画の制作など求職者への情報提供の仕組みを整えるため、初期費用がかかってしまいます。しかし長期的に見れば、採用コストを大幅に削減できる可能性があります。自社の特色を理解し、よりマッチした人材が集まれば、入社前後のギャップが生まれにくく、内定辞退や早期離職も減り、結果的に、追加の求人掲載費用などのコストを削減できます。
- 既存社員のモチベーションアップ
自社のブランドイメージや認知度が向上することは、既存社員にもプラスの影響をもたらします。社員たちは、企業理念やパーパスを再認識し、自分たちが取り組んでいる仕事に対して誇りを持つようになり、仕事に取り組む上でのモチベーションがアップすることが期待されます。
3.採用ブランディングを行う方法・手順
- 自社分析を行う
まず、採用ブランディングにおいて重要なのは、自社の置かれている状況を正確に分析し、課題を発見することです。学生向けイベントでアンケート実施したり、口コミサイトなどを活用したり、複数の情報を確認し、良い内容も悪い内容も企業のイメージを把握することが必要です。また、会社説明会でアンケートを実施し、「印象」のヒアリングを行うことも有用です。さらに、既存社員に対してもアンケートを実施する場合もあります。社内の声に偏りが出てしまう可能性に注意しながら、企業の魅力をアピールし、求職者が興味を持つようなブランディングを行っていきましょう。
- 自社の目指す姿を社内全体で認識する
自社の現状を明確に把握し、そこから会社の方向性や戦略を考慮して、自社のありたい姿を描くことが重要です。この段階では、採用担当だけでなく、会社のコーポレートブランディングやインナーブランディングを担当する部署と連携して進めましょう。会社全体の戦略に関する理解に基づいて採用ブランディングを行わなければ、方向性や認識のずれが発生してしまいます。
- ターゲットとなる求職者を整理する
次に、自社に入社し活躍する人物像を明確にするため、「ペルソナ」を設定します。「ペルソナ」という表現を用いるのは、単に「ターゲット」を設定するのではなく、志向や価値観を含めた、より具体的かつ人格的な設定を行う必要があるからです。どんな環境下で、どのような思考を持つ人物か、といった細かい点まで詳しく言語化します。この設定はブランディングの成功を左右するため、非常に重要な段階と言えます。
- 発信するメディアの選定とメッセージ
すべての人に届く必要はなく、設定したペルソナにどのような「形式」「チャネル」「タイミング」で発信すれば届くのか検討することが重要です。形式としては、テキスト、写真、動画、音声、イラスト、パンフレットからノベルティグッズまで様々なものがあります。発信チャネルとしては、求人サイトや自社運営の採用情報サイト、口コミサイト、X・Facebook・Instagramといった各種SNS、セミナーや会社説明会などが考えられます。タイミングについても、単発か複数回か、ある程度の期間を設けるのか、どの時期に行うかを吟味する必要があります。
4.採用ブランディングを行う上で注意すべきこと
- 「働く」ことに焦点を当てたブランディングを行う
採用ブランディングは、商品やサービスのブランディングとは、ターゲットと目的が異なります。商品やサービスのブランディングは「顧客に購買や利用を促す」ことが目的です。しかし、採用ブランディングにおいては「優秀な人材を獲得し、活躍してもらう」ことが目的となります。
- 全社を巻き込む必要がある
採用ブランディングは、採用活動に焦点を当てたものですが、企業イメージにも大きく影響します。そのため、会社全体の方針や商品・サービス等の企業ブランディングと整合性がない場合は、効果が上がらず、悪影響をもたらす可能性もあります。自社の目的や方針を明確に理解・言語化し、それを基盤として採用ブランディングを行うことが必要です。それぞれの部署や役割によって異なる発信を行うことを避け、会社全体で一貫性のあるメッセージを発信できるようにしなければなりません。
- 効果が出るまでに時間がかかる
採用ブランディングは中長期な取り組みが必要であり、短期間で成果がすぐに出るものではありません。分析からメッセージ決定、発信までを見直し、PDCAを回していくなど多くのアクションが必要です。
5.まとめ
企業の採用活動において、一番重要なのは「求職者とのマッチング」です。企業にマッチした求職者と繋がり、最後の一社に選ばれる。そして、社員として定着し活躍してもらうことが最終目標です。「採用ブランディング」の方法は企業ごとに様々です。まずは自社の色を改めて見直し、社内で方向性を合わせます。そして情報を整理し、戦略的に発信していくことで、少しずつ企業イメージとして認知されていきます。継続しPDCAを回していく過程の中で、自社のブランドが確立されていきますので、長期的な取り組みが必要不可欠です。